変形性膝関節症

変形性膝関節症の早期改善・予防を叶えるためにも、膝の構成と役割、変形性膝関節症の状態を把握しておきましょう。

●膝の構成と役割

膝関節は、太ももの大腿骨、すねの脛骨、膝のお皿部分にある膝蓋骨（しつがいこつ）という3種類の骨から構成されており、大腿骨と脛骨の間を曲げ伸ばす役割を担っています。

また、骨以外にも軟骨や靱帯、腱、筋肉などが関わっており、立つ、歩く、走る、飛ぶなどさまざまな動作をサポートしています。

●変形性膝関節症の状態

変形性膝関節症とは、膝の軟骨がすり減ることで痛みや変形が生じる病気です。
膝の軟骨には、衝撃を吸収する役割があります。
そのため、軟骨がすり減ると膝のクッション性が失われていき、さまざまな症状が出やすくなります。

●変形性膝関節症のおもな症状

変形性膝関節症の症状は、初期から中期、末期へと変化していきます。

・初期

初期は関節軟骨が少しすり減り、関節の隙間が狭くなっている状態です。
運動した翌日に痛みが出たり、歩きはじめや立ち上がりの際に痛みやこわばり、引っかかり感を覚えたりすることがあります。

・中期

中期は、さらに関節の隙間が狭くなり、滑膜での炎症が悪化している状態です。
階段の上り下りで痛みが出たり、正座が困難になったりします。
また、膝を動かしたときにガリガリといった不快な音を感じることもあります。

・末期

末期では骨が直接擦れるようになり、骨棘（こつきょく）というトゲができたり、骨が変形したりします。
安静にしていても強い痛みを感じることが多く、立ち方や歩き方にも悪影響が及んでO脚やX脚のような足の変形がひどくなることがあります。

●変形性膝関節症のおもな原因

・年齢

年齢を重ねるにつれて膝まわりの柔軟性が失われ、軟骨がすり減っていきます。

・膝のトラブル

関節リウマチや関節炎などの病気の影響で膝を悪くしていると、太ももやふくらはぎの筋力が落ち、膝関節を支える力が弱くなることがあります。
その結果、軟骨のすり減りが進行しやすくなります。

・ケガの後遺症

骨折や脱臼、靱帯損傷などのケガがあったのにも関わらず、無理に膝を動かしていると、膝関節にダメージが蓄積され、変形性膝関節症を発症する可能性が高まると考えられています。

・体型

体重が重いと膝にかかる負担も増えるため、軟骨がすり減りやすくなります。

・足のゆがみ

O脚やX脚のような足のゆがみがあると、膝関節の外側もしくは内側だけに負担が集中しやすくなり、一部の軟骨だけが極度にすり減ってしまうことがあります。

●関節リウマチ

自己免疫の異常によって、関節に炎症が起こる病気です。
膝関節に痛みや腫れなどの症状が出ることがあります。

●化膿性関節炎

化膿性関節炎は、関節内に細菌が侵入することで炎症が生じる病気です。
急速に進行していくため、早期の対応が必要になります。

●痛風

痛風は足の親指の付け根に激痛が起こることで有名ですが、膝に痛みが出るケースもあります。

変形性膝関節症は、次のような施術法で症状の緩和が期待できます。

●手技療法

変形膝関節症の方は、膝まわりの筋肉が硬くなっていることが多いです。
そのため、手技療法で筋肉の緊張を緩めていきます。

●ハイボルト療法

ハイボルト療法とは、高い電圧の刺激を患部に与える施術です。
痛みの緩和や腫れの軽減などに役立ちます。

●超音波療法

痛みや炎症がひどい場合は、超音波療法を併用します。
超音波療法は炎症反応がある部分にも使用でき、手技では対応できないところまで刺激を与えられます。

●鍼灸

炎症がつらい場合は、鍼灸によるアプローチも有効です。
鍼灸の刺激によって、痛みの緩和を目指します。

●ストレッチ・筋トレ

痛みを繰り返さないためには、膝まわりの筋肉を鍛える必要があります。
ストレッチや筋トレ方法のアドバイスをおこない、ご自宅でのケアもサポートします。

●施術期間

すり減った軟骨が自然と元に戻ることはありません。
施術は症状の悪化を防ぐことを目的としているため、長期間になりやすいです。

また、一時的に痛みが和らいでも、再び進行していく可能性があります。
そのため、症状が緩和したあとも定期的に施術を受け、メンテナンスすることが大切です。

●施術過程

まずは、痛みを軽減する施術から始めます。
膝の状態や炎症の度合いにあわせて、手技療法以外にもハイボルト療法や超音波療法などを組み合わせます。
歩くときに痛みが出ているようであれば、テーピングやサポーターによって膝への負担を減らすことも可能です。

症状が落ち着いたようであれば、再び痛みを繰り返さないようにするために、日常生活でおこなえるストレッチや筋トレ方法をアドバイスします。

すり減った軟骨を元に戻すことは困難です。
「変形性膝関節症かもしれない」と感じたら、早めの対処を心がけましょう。

●保存療法

・運動する

太ももやふくらはぎの筋力が低下すると、ますます膝にかかる負担が増え、軟骨のすり減りが早まる可能性があります。
悪化を防ぐためには、膝まわりの筋力を鍛えることが大切です。
次のようなトレーニングをして、膝まわりの筋力を鍛えましょう。

1．仰向けになり、足をこぶしひとつ分ほど開きましょう。
2．つま先を天井に向け、膝をまっすぐ伸ばしたまま、片方の膝を床から10cm程度上げます。
3．その状態を5秒間キープし、反対側のかかとでも繰り返します。

1日左右10回を目標におこないましょう。

・服薬する

変形性膝関節症は、変形の少ない初期段階であれば、薬物をつかう対処法も有効です。
変形性膝関節症に対する服薬は、外用薬や内服薬、注射薬などがあります。
医師に相談のうえで、正しく服薬しましょう。

●手術療法

保存療法をつづけても症状が緩和しない場合や、膝の変形が進行している場合は、手術が検討されます。

変形性膝関節症を予防するためには、普段の生活を見直すことが大切です。

●ウォーキングをおこなう

有酸素運動は脂肪を効率よく燃焼できるため、体重をコントロールするための運動としておすすめです。
また、歩くことで足まわりの筋力を維持しやすくなります。
変形性膝関節症を予防したい方は、1日30分程度を目安にウォーキングを取り入れてみましょう。

●スクワットをする

スクワットは、膝関節を支える太ももやおしりなどの筋肉をまんべんなく鍛えることができるトレーニングです。

1．肩幅程度に足を開き、膝とつま先を正面に向けて立ちます。
2．手のひらを上に向けて前に伸ばし、椅子に腰掛けるようなイメージで腰を落とします。
3．3秒間その状態をキープし、息を吐きながら元の姿勢に戻ります。

膝がつま先よりも前に出てしまうと、膝関節に負担がかかりやすくなります。
膝を前に突き出さず、おしりを引くような動きを意識しましょう。

●バランスのよい食事を心がける

食生活が乱れていると、体重が増えて膝への負担が増す可能性があります。
揚げ物や肉、甘いものなどを食べすぎないようにして、バランスのよい食事を心がけましょう。
魚や野菜、きのこ類などを積極的に食べることもおすすめです。